米国REITへの投資手段として最も便利なのは、ETFもしくは投資信託を購入する方法だと思いますが、数多くある商品の中でどれを選べば良いか選択に困ることはないでしょうか?
その理由の1つは、どれも米国REITだというだけで、中身の違いが分からないからだと思います。
逆に、インデックス投資をしていると知らない間にREITにも投資しているということもあります。例えば米国株の代表的なインデックスS&P500、これにはREITが含まれています。
これまでも、米国REITに投資する代表的なETFを本ブログで取り上げてきましたが、今回は、S&P500の不動産セクター銘柄(主にREIT)に投資する【XLRE】、高配当型ETFの中で唯一S&P500のREIT銘柄にも投資する【SPYD】、米国REITに広く投資する【IYR】の3つについて、2018年12月31日時点における構成銘柄やセクターの特徴について掘り下げてみたいと思います。
S&P500のREIT銘柄に投資できるETF
S&P500不動産セクターに投資できるETFとして今回比較するETFは以下の3本です。
- 【IYR】iシェアーズ 米国不動産 ETF(BlackRock)
- 【XLRE】不動産セレクト・セクター SPDR ファンド(State Street Global Advisors)
- 【SPYD】SPDR ポートフォリオ S&P500 高配当株式ETF(State Street Global Advisors)
【IYR】は米国REITに広く投資するETFの中でも比較的大型の銘柄まで含むETFです。日本で買える米国REITに投資するETFの中では、純資産総額や出来高が最も多いETFです。
【XLRE】はS&P500の不動産セクターをピックアップしたState Street Global Advisorsのセクターシリーズの1つです。
【SPYD】は純粋なREIT投資向けのETFではありませんが、高配当型スマートベータの中で唯一REITを除外していないETFです。REITを含めた米国株投資を検討する際には候補となりえるので今回の比較検討対象に加えました。
以上3つのETFの基本スペックは下表の通りです。
【IYR】に比べて【XLRE】と【SPYD】の経費率の低さが目立ちます。
構成銘柄の共通性による分類
構成銘柄の包含関係
上記3つのETFの2018年12月31日時点における構成銘柄を共通性のくくりで3つのグループに分類し、各グループ毎の構成銘柄数を整理した結果が以下の表とグラフです。
【SPYD】に含まれるREIT銘柄の全てが【XLRE】【IYR】に包含されており、【XLRE】の構成銘柄の全てが【IYR】に包含されています。
【IYR】が米国REIT全体に広く分散投資しているのに対し、【XLRE】はその28%の銘柄に、【SPYD】は17%の銘柄に投資対象が絞られています。
各グループの特徴
次に、銘柄数比率を時価総額比率に変換したものが以下のグラフです。
【SPYD】および【XLRE】のREIT銘柄はS&P500の構成銘柄ですので大型銘柄ですが、それと比べると、先程のグラフで《IYR単独グループ》の82銘柄(銘柄数比率で72%)は比較的小型のREIT銘柄であることが、時価総額で見た比率が半分の36%に減少していることから分かります。
逆に、《IYR/XLRE/SPYD共通グループ》の19銘柄と《IYR/XLRE共通銘柄グループ》の13銘柄の比率は時価総額では増加しています。
《IYR/XLRE/SPYD共通グループ》
3つのETFのインデックス構成要件の違いから考えると、このグループは「大型で配当利回りの高いREIT」ということになります。これが【SPYD】のREIT銘柄の特徴です。
具体的な銘柄を挙げておくと、【IYR】における上位5銘柄だと下表のような銘柄になります。
2位にインフラ系REIT(Infrastructure)が入っていますが、【IYR】【XLRE】【SPYD】の3者に共通する他の米国REITのETFと異なる特徴が、このインフラ系REITを含んでいる点です。
先程のグラフで、このグループに属する19銘柄の時価総額は、【XLRE】の53%、【IYR】の34%を占めています。【SPYD】に投資すれば、時価総額で見ると米国REITの約三分の一に投資できるとイメージできます。
ただし、このグループの構成銘柄間比率については注意が必要で、【IYR】と【XLRE】においては時価総額比率ですが、【SPYD】においては均等配分比率です。
《IYR/XLRE共通グループ》
【SPYD】に含まれなかったこのグループはS&P500銘柄ではあるので「比較的利回りは低めの大型REIT」ということになります。
具体的な銘柄を挙げておくと、【IYR】における上位5銘柄だと下表のような銘柄になります。
このグループと《IYR/XLRE/SPYD共通グループ》を足した【XLRE】は、時価総額では【IYR】の64%を占めています。
【XLRE】に投資すれば、銘柄数では全体の28%でしかありませんが、時価総額では全体のおよそ3分の2の大型REITに投資できることになります。
《IYR単独グループ》
【SPYD】にも【XLRE】にも含まれない《IYR単独グループ》の銘柄は、銘柄数こそ82銘柄ありましたが、時価総額では全体の36%しかありません。
それだけ小さな銘柄が多く集まってありということで、このグループに属する銘柄の大半は「中型以下のREIT」です。
具体的な上位銘柄を挙げておくと、以下のような銘柄です。
構成銘柄サイズ比較
【IYR】と【XLRE】の構成銘柄サイズを比較した結果が下表です。
構成銘柄サイズの『最大』は両者等しいですが、『平均』『最小』『中央』はいずれも【IYR】の方が随分小さく、【XLRE】の『最小』よりも【IYR】の『中央』が小さいことからも、【IYR】の構成銘柄のうち大型寄りの銘柄を抽出したものが【XLRE】であることが分かります。
セクター構成の比較
【IYR】【XLRE】【SPYD】の2018年12月31日時点におけるREIT銘柄について、セクター構成比率を比較したのが以下のグラフです。
凡例のRetail(商業施設系)、Infrastructure(インフラ系)、Residential(住宅系)、Health care(ヘルスケア系)、Office(オフィス系)、Industrial(物流系)、Data center(データセンター)、Self-storage(貸倉庫)、Others(未分類)、Diversified(複合型)、Lodging/Resorts(ホテル・リゾート系)、Mortgage(モーゲージ)、Specialty(特化型)、Timberlands(森林系)の順に下から積み上げています。
セクター構成に関しては、【IYR】が最もバランス良く分散できています。
【XLRE】は【IYR】と比べると上位セクターに集中する傾向が強くなっています。
【SPYD】は銘柄数が少ないこともあって上位集中傾向が更に強まりますが、インデックスの特性上配当利回りの高い銘柄やセクターに絞り込まれた結果であるとも考えられます。
例えば、RetailやHealth careの比率は【IYR】よりも大きく増えていますが、InfrastructureやIndustrialは大きく減少しているのが、それに該当すると考えています。
まとめ
米国S&P500のREIT銘柄に投資できる3本のETF【IYR】【XLRE】【SPYD】の構成銘柄の共通性、銘柄サイズ、セクター構成を分析し、各々の特徴を調べた結果をまとめると以下の通りです。
IYR/XLRE/SPYD3者の関係と特徴
- 3者のREIT銘柄の包含関係は、【IYR】>【XLRE】>【SPYD】
- 【IYR】の構成銘柄のうちからS&P500に含まれる大型銘柄を抽出したものが【XLRE】
- 【XLRE】の構成銘柄のうちから配当利回りの高い銘柄を抽出し均等配分したものが【SPYD】
- 【IYR】は最もセクター構成がバランス良く分散しており、それと比べて【XLRE】と【SPYD】のREIT銘柄は上位集中傾向が強くなる。
投資スタイル別ベストチョイス
したがって、米国REITへの投資スタイル別でまとめ直すと、
- 幅広い銘柄やセクターにバランスよく投資したい場合には【IYR】
- 低コストで大型の銘柄に集中して投資したい場合には【XLRE】
- 低コストで大型で配当利回りの高い銘柄だけに集中して投資したい場合には【SPYD】
という結論になります。
なお、【SPYD】のREIT銘柄は少数の大型銘柄に集中していますが、ETF全体として見ればREIT以外の銘柄による分散効果が期待できるので、ポートフォリオにREITを加える手段として【SPYD】という選択肢も案外アリと思います。
また、各ETFの個別記事もまとめていますので、よろしければご覧ください。↓
それでは、また!