米国REITへの投資手段として最も便利なのは、ETFもしくは投資信託を購入する方法だと思いますが、数多くある商品の中でどれを選べば良いか選択に困ることはないでしょうか?
その理由の1つは、どれも米国REITだというだけで、中身の違いが分からないからだと思います。
これまでも、米国REITに投資する代表的なETFを本ブログで取り上げてきましたが、今回は、米国REITに投資する代表的な3つのETF【IYR】【RWR】【1659】の2018年12月31日時点における構成銘柄やセクターの特徴について掘り下げてみたいと思います。
米国REITに投資する代表的なETF
米国REITに投資するETFのうち、構成銘柄数が比較的多く分散の効いているものは、次の3つです。
- 【IYR】iシェアーズ 米国不動産 ETF(BlackRock)
- 【RWR】SPDR ダウ・ジョーンズ REIT ETF(State Street Global Advisors)
- 【1659】iシェアーズ 米国リート ETF(ブラックロック・ジャパン)
【1659】は、米国上場のETF【USRT】に投資する国内上場ETFです。
これら3つのETFの基本スペックは下表の通りです。
構成銘柄の比較
上記3つのETFの2018年12月31日時点における構成銘柄を共通性のくくりで分類し、各グループ毎の構成銘柄数を整理した結果が以下の表とグラフです。
まず、3つの中で銘柄数が最も少ない【RWR】は、その98%の銘柄が【1659 (USRT)】に包含されていることが分かります。
また、【IYR】と【1659 (USRT)】の共通銘柄に着目すると、【IYR】の82%と【1659 (USRT)】の58%を占める93銘柄は共通で、【IYR】の残り21銘柄のうち20銘柄(18%)と【1659 (USRT)】の残りのうちの39銘柄(24%)が、各々固有の銘柄で構成されていることも分かります。
したがって、【IYR】だけに含まれる20銘柄、【1659 (USRT)】だけに含まれる39銘柄の特徴を見れば、3つのETFの特徴が見えてくるはずです。
《IYR単独グループ》の特徴
《IYR単独グループ》に含まれる銘柄は下表に示す20銘柄です。
《IYR単独グループ》に含まれる銘柄は、セクターで言えば、未分類のもの(Others)を除けば、インフラ系REIT(Infrastructure)、森林系REIT(Timberlands)、モーゲージREIT(Mortgage)のいずれかの銘柄です。これらのセクターの銘柄は、【RWR】や【1659 (USRT)】には含まれていません。
これらインフラ系REITや森林系REITが【RWR】や【1659 (USRT)】に含まれないのは、各々のインデックス要件でこれらのセクター銘柄を除外しているからです。
【IYR】の銘柄構成上の特徴は、インフラ系REIT、森林系REIT、モーゲージREITを含む点であると言えそうです。
《1659 (USRT)単独グループ》の特徴
《1659 (USRT)単独グループ》のだけに含まれる39銘柄のうち上位20銘柄が下表です。
《1659 (USRT)単独グループ》に含まれる銘柄は、時価総額比率も低い小型のあまり見慣れない銘柄ばかりです。
セクターで言うと、物流系REIT(Industrial)、商業系REIT(Retail)、複合型REIT(Diversified)などです。
これらの銘柄は【1659 (USRT)】の中でも時価総額比率が下位にくる銘柄が多く、【1659 (USRT)】の構成銘柄上の特徴は小型銘柄を多く含む点であると言えそうです。
構成銘柄サイズ比較
構成銘柄サイズを比較した結果が下表ですが、【RWR】の構成銘柄サイズと比較すると、【IYR】は大型寄り、【1659】は小型寄りといった、3つのETFの特徴がよく出ています。
(前表とは【1659】の銘柄総数が少し違っていますが、調査時期違いによるものなので、ご了承ください)
セクター構成の比較
【IYR】【RWR】【SPYD1659 (USRT)】について、2018年12月31日時点におけるセクター構成比率を比較したのが以下のグラフです。
凡例のRetail(商業系)、Infrastructure(インフラ系)、Residential(住宅系)、Health care(ヘルスケア系)、Office(オフィス系)、Industrial(物流)、Data center(データセンター)、Self-storage(貸倉庫)、Others(未分類)系、Diversified(複合型)、Lodging/Resorts(ホテル・リゾート系)、Mortgage(モーゲージ)、Specialty(特化型)、Timberlands(森林系)の順に下から積み上げています。
セクター構成に関しては、【IYR】は全セクターにバランス良く分散できています。
【1659 (USRT)】も、【IYR】よりセクター数は少ないものの、バランスは悪くはありません。
両者と比べて、【RWR】はややバランスが悪く、上位集中傾向も強くなっています。
構成銘柄のところで、「【IYR】の特徴は、インフラ系REIT・森林系REIT・モーゲージREITを含むこと」と言いましたが、上のグラフを見れば一目瞭然です。
また、【RWR】は特化型REIT(Specialty)を含まないことも分かります。特化型REITとは、映画館、カジノ、農場、屋外広告などを手がけるREITですが、これらも【RWR】のインデックス『ダウ・ジョーンズ U.S.セレクトREIT指数』において除外されています。
まとめ
米国REITに投資する比較的構成銘柄数の多い3つの代表的なETF【IYR】【RWR】【1659】の構成銘柄の共通性、銘柄サイズ、セクター構成を分析し、各々の特徴を調べた結果をまとめると以下の通りです。
- 【RWR】の銘柄のほとんどは【1659】に含まれる。
- 【IYR】は、インフラ系REIT・森林系REIT・モーゲージREITを含むが、【RWR】と【1659】は含まない。
- 【RWR】は特化型REITも含まない。
- 【RWR】の構成銘柄サイズと比較すると、【IYR】は大型寄り、【1659】は小型寄りである。
- セクター構成に関しては、【IYR】は全セクターにバランス良く分散できており、【1659】もセクター数は減るもののバランスは悪くない。両者に対し、【RWR】はややバランスが悪く上位集中傾向も強い。
したがって、【IYR】【RWR】【1659】の3つから1つを選択する場合には、コスト、国内取引の可否や取引量(【1659】は少ない)に加えて、インフラ系REITへの投資の是非、セクター構成のバランスを判断材料にして、自分好みの1つを選択すればよいと思います。
なお、これら3つのETFのパフォーマンスについては、以下の記事にて紹介していますので、よろしければご覧ください。↓
また、各ETFの個別記事もありますので、よろしければご覧ください。↓
それでは、また!