こんにちは。トビオです。
米国ETFへの投資を検討するために、これまでに幾つかの高配当株スマートベータのETFについて調べてきました。
ここで、これまで調べてきた事をまとめる意味も兼ねて、低コストな3つのETF【SPYD】【HDV】【VYM】をピックアップし、特徴や特性の違いを比較考察した内容を複数回に分けてご紹介していきたいと思います。
前回の「①インデックス編」に続き、今回は「②構成銘柄編」です。
構成銘柄の特徴
前回記事でご紹介した三者のインデックスの違いによって、各ETFの構成銘柄はどの様に異なってきて、ETFの特色にどの様な影響を及ぼしているのでしょうか?
そこで、各ETFの構成銘柄の違いを把握し易くするために、共通銘柄と単独銘柄にグループ分けして各ETFの特徴を探ることにしました。
グループの分け方としては、各ETF構成銘柄のうちで、S&P500銘柄については、三者に共通する銘柄グループ、二者に共通する銘柄グループ、各ETFだけに含まれる単独銘柄グループに分類し、残りはS&P500以外グループとして、合計8グループです。
共通銘柄と単独銘柄によるグループ分け
まず、各グループに含まれるの銘柄数は下表の通りです。
【SPYD】【VYM】【HDV】三者に共通の銘柄は19銘柄、【SPYD】【VYM】二者だけに共通の銘柄は41銘柄、【VYM】【HDV】二者だけに共通の銘柄は31銘柄、【SPYD】【HDV】二者だけに共通の銘柄は0銘柄、【SPYD】単独銘柄は19銘柄、【VYM】単独銘柄は83銘柄、【HDV】単独銘柄は2銘柄、【S&P500以外】の銘柄は、VYMに220銘柄、HDVに23銘柄という結果でした。
銘柄数が存在した7グループについて、まず各ETFにおける銘柄数比率および金額比率をグラフ化したものが以下です。
なお、金額比率のグラフに関しては、実際のETF保有比率の引用値ではなく、銘柄数と時価総額および配当利回りデータを基に当方が計算した結果です。
【SPYD】の特徴
【SPYD】に関しては均等加重方式であるため銘柄数比率と金額比率は計算上同じです。
【SPYD】全体の76%が【HDV】に含まれない銘柄であり、これらの大半は、REITであるか、Morningstarのエコノミック・モート基準もしくはデフォルト基準をパスしない銘柄ですので、【HDV】の構成ポリシーを重要視する場合には【SPYD】はかなり異端の構成内容であると言えます。
一方、全体の76%は【VYM】と共通の銘柄ですので、【VYM】の性格とは似通った部分を持ち合わせているでしょう。
【VYM】の特徴
まず、【VYM】の構成銘柄数の56%はS&P500以外の銘柄ですが、これらは時価総額が比較的小さいため、金額比率で見ると全体の6%でしかなく、大半はやはりS&P500の大型銘柄です。
また、【VYM】の金額比率の34%が【SPYD】と共通、43%が【HDV】と共通ですので、【VYM】は【SPYD】と【HDV】の特性をブレンドしたようなETFであるという見方もできます。
その様に考えると、【VYM】固有の特性は【VYM】だけが保有する銘柄によって特色付けられることになりますが、これについては後ほど再確認します。
【HDV】の特徴
【HDV】の金額比率の96%は【SPYD】か【VYM】のいずれかと共通で、【HDV】だけが保有する銘柄はほとんど支配的ではありません。
したがって、【HDV】固有の特性は【HDV】独自の銘柄が決定づけるのではなく、他のETFが保有する様な銘柄を削ぎ落とすことによって生じると考えられます。
それは、前記事で紹介した【HDV】がベンチマークするインデックス『モーニングスター配当フォーカス指数』の銘柄選定におけるエコノミック・モートに関する基準とデフォルトに関する基準から来るものと考えられます。
【HDV】は年4回も銘柄入替とリバランスを頻繁に行い銘柄が入れ替えるのも、前記基準に合格する銘柄にキープし続けることを相当重要視している証だと考えられます。
構成銘柄グループ毎の特徴
次に、前記の各銘柄グループに含まれる個々の銘柄から代表的なものを10銘柄ずつピックアップしたものが下表です。各グループの特徴を考察していきましょう。
SPYD/VYM/HDV共通銘柄グループ
このグループは、3つのETF全てのインデックス・ポリシーに合致する銘柄なので、配当利回りが高く、エコノミック・モートを有しデフォルト懸念も少なく、且つ規模の大きい企業であるはずです。
実際に銘柄名を見ると、強い利益体質やブランド力を有するコカコーラ【KO】やP&G【PG】、高配当で規模の大きいエネルギー分野のエクソン・モービル【XOM】や通信分野のベライゾン【VZ】等が含まれています。
SPYD/VYM共通銘柄グループ
このグループは、配当利回りが高く規模も大きいがエコノミック・モートに関してはやや苦しい企業であるはずです。
確かに、自動車のフォード【F】、通信分野のAT&T【T】、食品分野の【KHC】、情報技術の老舗【IBM】はその様に言えなくもありません。
しかし長年連続増配を続けているヘルスケア分野のアッビィ【ABBV】や公益事業の【ED】まで含まれているのは少々意外です。【ABBV】に関しては、同社の成長を支えてきたバイオ薬ヒュミラの特許切れ後の不確定要素をマイナス評価しているためでしょうか。
VYM/HDV共通銘柄グループ
このグループは、配当利回りは極めて高いわけではないがソコソコのレベルで、エコノミック・モートを有する大企業であるはずです。
実際の銘柄名を見ると、確かに参入障壁の高いロッキード・マーチン【LMT】、強いブランド力を持つペプシ【PEP】やジョンソン&ジョンソン【JNJ】やコルゲート【CL】といった、配当利回りソコソコ組が並んでいます。
SPYD単独銘柄グループ
このグループは、ご覧の様に、あまり馴染みのない銘柄名が並んでいますが、配当利回りはしっかり高い銘柄が並んでいます。
ほとんどREITの高配当銘柄で、これらの銘柄群が【SPYD】を特徴付けています。
VYM単独銘柄グループ
このグループは、配当利回りがそれほど高くなく、またエコノミック・モートの点ではやや苦しい銘柄のはずです。
事業経営が苦しいゼネラルエレクトリック【GE】、強力な競争相手アマゾンと戦わなければならないウォルグリーン【WBA】やウォルマート【WMT】など、経営環境が厳しい企業が多そうです。
強いブランド力を持つマクドナルド【MCD】や参入障壁の高い航空機分野のボーイング【BA】もこのグループですが、これらの銘柄はもう少し配当利回りが高ければVYM/HDV共通銘柄グループに入っていたかもしれません。
ですから、このグループに属する銘柄の全てがS&P500の中で劣勢であるとまでは言いませんが、厳しい状況に置かれている企業はやはり多いのでしょう。
この様な経営環境が厳しい銘柄や、全体に占める割合が僅かにしかならないS&P500以外の小型銘柄を数多く保有することも、他2つのETFと比較した時の【VYM】の特徴です。高配当寄りの企業を選別している点を除き、市場の姿に近い構成を目指しているのもコンセプトなのでしょう。
HDV単独銘柄グループ
このグループは、銘柄数が極めて少なく、また馴染みの名前でもありません。
配当利回りソコソコ組ですが、【HDV】エコノミック・モート基準やデフォルト基準にはパスしていますので、運悪く【VYM】から漏れてこちらのグループに入ったのでしょう。
【VYM】に含まれずに【HDV】にだけ含まれる銘柄が【VYM】だけに含まれる銘柄と比べてこれだけ少ないというのは、【VYM】よりも【HDV】の銘柄選定基準が厳しいことを物語っています。
まとめ
3つの米国高配当スマートベータ型ETFである【SPYD】【VYM】【HDV】について、その構成銘柄の共通性や違いを調べ、各々の特徴を見てきた結果を以下の様にまとめました。
- 【SPYD】と【HDV】は共通銘柄を有するものの、それら以外の銘柄に関し、【SPYD】は配当利回りの高さを追求した銘柄で固め、一方の【HDV】は企業の質に重きを置き徹底的にポリシーに合致した銘柄で固めるという対極にあるETFである。
- 【VYM】はこれら2つのETFをブレンドした様な構成をコアにして、残りの【VYM】固有の銘柄については、経営環境はやや厳しいがソコソコの配当を払ってくれるS&P500銘柄の大企業とS&P500には入らないが配当はソコソコの多数の中・小型銘柄で構成されている。
次回は「③パフォーマンス編」です。
それでは、また!
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