こんにちは。トビオです。
米国株高配当型スマートベータとして幾つかの魅力的なETFが上場されていますが、その中の一つ、バンガード・米国高配当株式ETF【VYM】を紹介します。
ファンドの概要
バンガード・米国高配当株式ETF【VYM】は、『FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス』への連動を目指すETFです。
- 運用会社:Vanguard
- インデックス:『FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス』
- 純資産総額:31.16 B USD
- 組入銘柄数:396
- 総経費率:0.06%
- 設定日:2006年11月10日
(2019年3月13日時点)
インデックス『FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス』とは?
『FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス(FTSE High Dividend Yield Index)』は、配当利回り上位の銘柄で構成されている時価総額加重型の指数です。構成銘柄からREITは除外されています。
銘柄スクリーニング
インデックスの特徴を理解するために、具体的なスクリーニング手順をもう少し紐解きたいと思います。
【VYM】のFact Sheetには、『FTSE High Dividend Yield Index』は「FTSE グローバル・エクイティ・インデックス・シリーズ(GEIS)の米国コンポーネントの派生インデックス」とあり、GEISを調べたところ、FTSE Global All Capのうち米国企業は1,847銘柄(2019年2月28日時点)ですので、この1,847銘柄が『FTSE High Dividend Yield Index』の構成銘柄抽出における母数になっているものと思われます。
『FTSE High Dividend Yield Index』そのものズバリのFact Sheetを探し切れなかったのですが、GEISの中で類似の『FTSE All-World High Dividend Yield Index』に採用されているスクリーニング方法を参考に推察すると、先程の母数からREITと1年先までの予想配当が無配の銘柄をまず除外し、残る銘柄を年間配当利回り順に並べて、高いもの順に、累積時価総額が全時価総額の50%になるまでインデックスに組み入れていくという手順で構成銘柄が決定されているものと思われます。これが「配当利回り上位」の意味合いです。
構成銘柄比率
構成銘柄比率は時価総額加重方式です。
結果的に時価総額の大きい銘柄が支配的となります。
リバランス
リバランスは年1回行われますが、バッファーゾーンを設け、ポートフォリオの売買回転率を抑える工夫がされています。
【インデックスの特徴】
組入上位銘柄
ファンド組入上位10銘柄は以下の通りです。
- Johnson & Johnson 3.63%
- JPMorgan Chase & Co. 3.42%
- Exxon Mobil Corp. 3.32%
- Pfizer Inc. 2.49%
- Procter & Gamble Co. 2.43%
- Intel Corp. 2.40%
- Boeing Co. 2.33%
- Verizon Communications Inc. 2.33%
- Cisco Systems Inc. 2.33%
- Chevron Corp. 2.26%
(2019年2月28日時点)
時価総額加重型なので、上位にはご覧のように有名大企業ばかりが並んでいます。
全396銘柄中の上位10銘柄だけで純資産総額の約27%を占めていますので、他の高配当型ETFより組入銘柄数が多い割には意外と上位集中傾向が強いです。
参考のため、先程のデータより11ヶ月前の2018年3月31日時点の上位10銘柄は以下のようでした。
- Microsoft Corp. 7.0%
- JPMorgan Chase & Co. 3.9%
- Johnson & Johnson 3.5%
- Exxon Mobil Corp. 3.2%
- Intel Corp. 2.5%
- Wells Fargo & Co. 2.4%
- AT&T Inc. 2.2%
- Chevron Corp. 2.2%
- Cisco Systems Inc. 2.2%
- Pfizer Inc. 2.2%
(2018年3月31日時点)
1年近くの間に幾つか銘柄が変化していますが、最も大きな変化は当時1位であったMicrosoftです。Microsoftだけで7.0%を占めています。
この当時、Microsoftは配当利回り上位にギリギリ入り、時価総額が大きいので1位にランキングされていたものが、この1年の間に上位から外れたものと思われます。時価総額が他のランキング銘柄と比べて大きいことは変化していませんので、組入上位10位にいないということは全体における配当利回り上位枠からも外れたということです。
また、この時、Microsoft1社が配当利回り上位から外れたことによって、多くの銘柄入替も起こっているはずです。
以上の様な現象は今後もあるでしょうし、MicrosoftだけでなくAppleについても起こるかもしれません。このインデックスのスクリーニング手順から起こるETFの特徴として頭の隅に置いておきましょう。
業種別配分
ファンド組入銘柄の業種別配分は以下の通りです。
- 金融 15.3%
- ヘルスケア 13.7%
- 消費財 13.1%
- 資本財 12.1%
- テクノロジー 11.1%
- 消費者サービズ 9.3%
- 石油・ガス 9.1%
- 公益 8.0%
- 通信サービス 4.7%
- 素材 3.6%
(2019年2月28日時点)
無配銘柄はスクリーニングの段階で除外されますので、利益を配当に回さず投資に回す傾向の強い高成長企業が多い「テクノロジー」セクターの順位が下がり、利益のうちの多くを配当として還元する傾向の強い成熟企業が多く含まれるセクターの順位が相対的に上がる傾向にあります。
また、時価総額加重であるため、配当利回りが一般的に高い「公益」が比率の点で上位に来ない所も、他の高配当型ETFとは異なる点です。
結果的に、特定のセクターに大きく偏ることなく投資できるセクター配分になっています。
参考のため、上位銘柄の時と同様に、11ヶ月前の2018年3月31日時点の業種別配分を見ておきましょう。
- テクノロジー 17.0%
- 金融 14.2%
- ヘルスケア 12.9%
- 資本財 12.7%
- 消費財 12.5%
- 石油・ガス 9.3%
- 公益 7.3%
- 消費者サービズ 5.9%
- 通信サービス 4.5%
- 素材 3.7%
(2018年3月31日時点)
先述のMicrosoftの存在により、当時は1位が「テクノロジー」でした。他は大きくは変わっていませんが、超大型銘柄が上位半分に入るか外れるかにより全体特性の大きな変化が起こり得るETFであると言えるでしょう。
時価総額サイズ分布
ファンド組入銘柄の時価総額サイズの分布は、2019年2月28日時点で以下のようになっています。
【時価総額サイズ比率】
- Large 83.6%
- Medium/Large 2.5%
- Medium 8.5%
- Medium/Small 2.8%
- Small 2.6%
【時価総額中央値】
- 112.2 billion USD
時価総額加重であるためLarge Capが支配的ですが、全てがLarge Capばかりではなく、僅かながらSmall Capも含まれているのは、先述のスクリーニング手順によるものです。
【VYM】はけっして大型株だけから高配当銘柄を選定しているETFではありません。
分配金利回り
2019年2月28日時点のファンドの30日SEC利回りが3.28%ですから、高配当型ETFとしては平均的なレベルです。
まあ、396銘柄も選べば利回りがそれほど高くない銘柄も含まれてくるでしょうし、時価総額の大きい上位銘柄全てが必ずしも高利回りではありませんので、ベンチマークするインデックスのスクリーニング手順に従えばこのようになってしまいます。
トータルリターン
そもそも高成長企業が除外される傾向を持つインデックスですので、配当を含まないプライスリターンで市場平均型と比較してもあまり意味がありません。
配当含めたトータルリターンで、S&P500への連動を目指す【IVV】と比較した結果が下表です。
配当を含めたトータルリターンで比較しても、過去の実績の範囲では、S&P500と比べてパフォーマンスが大きく上回る訳ではありません。
まとめ
バンガード・米国高配当株式ETF【VYM】は、分配金利回りの高さだけに拘るのではなく、しっかり配当を支払う大企業を中心にバランスよく投資したい場合に適したETFで、高配当型ETFの中では最もクセがないETFです。
高配当型ETFとしては決して利回りは高くはありませんし、市場平均型ETFを大きく上回るトータルリターンが期待できる訳でもありませんが、配当利回り上位企業から構成されているので、配当による下支え効果により一般的な市場平均型ETFよりも株価変動は良くも悪くもマイルドになるものと思われます。
また、現時点において総経費率0.06%というのは高配当型ETFの中では最低レベルです。
「低コストで市場平均型よりも少し配当を気にしながら投資したい」と考える場合にオススメのETFです。
それでは、また!